2017年4月号
母子の健康月間
母子の健康月間に寄せて
―ロータリーは何をすべきか―
田舎の老いた小児科医 岡崎RC 杉浦壽康
「母子の健康月間」の制定は遅きに失したとは言え、子どもに関係する仕事に従事している者にとって喜ばしいことである。大げさに言えば、世界の平和に関心を持ち、行動し、努力する人間(成人)になるよう胎児期から育むことはロータリー精神そのものである。
「母子の健康」であるから「母体(母親)」のことも考えなければならないが、小児科医である筆者はどうしても「子ども」を中心に考えてしまうことをお許し願いたい。
子どもを育むことで大切なことは「健康」である。「健康」には「身体の健康」と「心の健康」がある。RI が当面目指しているのは発展途上国における「身体」の健康(ポリオ撲滅)である。RI は、地球上からポリオ撲滅を目指し行動を起こし20 年以上の歳月と莫大な浄財を費やしている。近年漸く撲滅に近づいているが未だ撲滅宣言は出ない。何故だろう?根底に生活様式、文化、宗教の違い、そして最も重要なのは識字率(教育、知育)の問題と地域紛争である。発展途上国の健康問題の解決には紛争終結も重要であるが、先ず識字率の向上に力を入れるべきであり識字率の向上無くしては難しいと思う。
一方、識字率が高く国民の生活が経済的にも文化的にも豊かな国、いわゆる先進国日本では発展途上国に見られるような重い感染症や飢餓(栄養失調)は見られない。今日の日本では「身体の健康」より「心の健康」が課題である。「不登校」(学童・生徒13 万人、2016 年)「引きこもり」(成人70 万から100 万、2016 年)「発達障害」(学童・生徒の6~10%)並びに「虐待」(児童相談所が扱った件数10 万3 千件・27 年度速報)など「心の健康」あるいは「子育てのあり方」が社会問題となっている。
「発達障害」を除いて脳に病変が有るかどうか解っていない。また発達障害の一部を除いて治療薬はなく、こうした子どもの成長・発達には親や周りの大人の子どもへの関わり方が大切であると考えられている。言い換えれば「子育て」あるいは「教育」のあり方である。今日観る子どもの心の健康問題は約50 年前に始まった核家族(子育て)と高学歴志向(教育)に端を発していると思われる。
子どもへの関わり方は、民族によって千差萬別であり、身体の健康に比べRI が一律に対処することはできない。日本のロータリアンは日本の現状を十分に認識して、「母子の心の健康問題」に取り組まなければならない。