【講演】2050年の名古屋 ~名古屋の覚悟~(名古屋東ロータリークラブ)
中京大学客員教授 東海学園大学客員教授
東名古屋カントリークラブ理事長
第20代名古屋市長 松原 武久 氏
現在名古屋市の人口は約225万人です。高齢者を中心に名古屋市へ戻る回帰現象が起きているため、2025年でも人口が減らず、総人口が231万9000人、高齢者は61万8000人、0~14歳の年少人口は23万1900人と予測されます。昭和57年、高齢者人口と年少人口は互いに32万ぐらいずつでした。それが、61万と23万。これが名古屋が今後、20年ぐらいかけて迎える少子高齢化の推計値です。
この少子高齢化が進むと、義務的経費の急増が不安です。名古屋市の予算(一般会計)は約1兆円で、その約37%、3400億から3500億円は福祉・医療・保険の予算です。残りでインフラ整備、教育、文化、職員の人件費など全部をしなければなりません。
2つ目の不安はアセットマネジメント経費の漸減と防災対策経費の急増があります。アセットマネジメントとは、都市が持っている資産、財産をメンテナンスすることで、学校や区役所、消防署、あるいは施設建設物で、耐用年数の来たものがいくつかあります。
南海トラフ地震はマグニチュード9.1が想定されています。現在は8.7で計画されていますから、それではとても間に合わず、防災対策経費は今後伸びざるを得ません。しかし、義務的経費が増えるので、都市インフラの再整備についてかける金が減っています。
さらに、名古屋市には今、長期総合計画がありません。単年度ごとの予算で決めていて、言わば“羅針盤のない航海”をしているのが名古屋市の現状です。
その中で名古屋の都市ブランド力が低下しています。万博の年に全国で13位まで上がりましたが、現在は23位です。
このブランド力は北海道が圧倒的に強くて、1位は札幌。他に小樽、函館、富良野がベスト10に入っています。他は、港町の横浜、神戸、日本の首都でした京都。福岡もブランド力を上げています。それぞれの町に取り柄があります。私は「大名文化とものづくり文化を名古屋のブランド力にしなければいけない」と言い続けてきましたが、いくつか行った施策は単発になり、ブランド力の低下は深刻です。
2027年にリニア新幹線が名古屋まで来たときに、一旦降りた客をどのようにビジターとして半日でも1日でも過ごしていただくかを考えなければなりません。
そこで、2050年の名古屋戦略の目玉を申し上げます。名古屋はごみの問題で苦労し、COP10を開催し、皆さんが承知している以上に世界的には環境都市として高く評価されています。その中で、「コンパクトシティ」を作って行く。これを都市の目標にすべきであると考えます。そのキーワードは「都心集住」です。
中区には現在7万5000人が住んでいますが、これを15万人にできると、都市内を通行する車の量は約40%減り、CO2の排出量を大幅に減らせます。
そのためには広小路の抜本的な作り直しが必要です。名古屋は都市再生緊急整備地域に指定されました。広小路の両側、桜通までのところを緊急整備地域に入れて、容積率を800%ぐらいに引き上げると、5階か6階建ての家を、パリの街並みのように作り直すことができます。それをすると15万人ぐらい住めます。広小路通りは幅を両側5メートルぐらいに下げ、歩いて楽しむ町をつくる。それが広小路ルネッサンスです。これをやれば名古屋は都心集住に相応しい街になります。