【講演】飢餓のない世界を目指して国連WFPの活動(豊橋北ロータリークラブ)
国連WFP事務局長 横手仁美氏
皆様こんにちは。ただいまご紹介頂きました国連WFP協会の横手と申します。本日はお招き本当にありがとうございます。
目録30 万円という皆様の温かい思いの詰まったご寄付を頂戴いたしました。
本当にありがとうございます。
本日は、国連WFPの組織的な所から、活動の内容、日本での取り組みなどを説明させていただきます。少しでも国連WFPについてご理解していただき、皆様の温かい気持ちによる支援の輪が広がっていくことを期待したいと思っております。
ご存知のとおり世界の人口は70 億人を超え、一方で飢餓人口は10 億人と言われています。7人に1人が飢餓の状態にあるという状況です。また、学校に行きたくても貧しさゆえ行けない子どもさんが6,700 万人おります。学校には行けても、お腹の空いた状態で行っている子どもさんが6,600 万人。それが私達の世界の現実です。こうした現実に対して、国連WFPがどのような活動を行ってるかを説明したいと思います。
国連WFPとは、飢餓と貧困の撲滅を使命に活動している国連の団体です。もう少し詳しく説明しますと、2 つの組織のことを国連WFPと呼んでいます。
1 つは、国連側の組織のWFP国連世界食料計画という組織。もう1つは、日本のNPO法人国連WFP協会という組織です。私が所属しているのは後者になりますので、私は国連の職員ではありません。
前者の国連世界食料計画のメンバーは、国連の職員という事になります。こちらはローマに本部を構え、1963 年から本格的に活動を開始し、約50 年の活動の履歴があります。昨年では、75 ヶ国の約1億人に360 万トンの食料支援をしました。各国の政府の任意拠出金、企業・団体そして個人からの募金などを活動資金として運営されています。年間およそ3 千億円規模の資金を必要としており、今年は7,550 万人以上に食料を届ける事を目標とし、37 億米ドルを目標に資金を集めています。
日本政府も外務省のODAなどを含め、かなりの拠出金を出しており、世界で第3 位となる238 億円という金額を拠出しています。皆様の税金の一部がこの団体の活動資金として使われていることになりますので、日本の一国民としてもWFPについて知っていただきたいと思います。
続いて私の所属している国連WFP協会についてお話します。国連WFP協会というのは略称でして、正式名称は「特定非営利活動法人 国際連合世界食糧計画WFP協会」と申します。こちらは日本における唯一の民間の窓口です。企業との連携、一般の皆様からの募金、広報などが、主な活動です。こちらは独立したNPOの組織ですので理事会があります。現在、日清食品ホールディングスのCEO安藤宏基さんが、非常にご多忙な中、ボランティア、善意で会長の任を務めてくださっております。
昨年、1 年間の寄付の収入実績は約7.6 億円でした。協会には評議会制度というものがあり、評議員の数が現在616 名です。主に企業の参加が多いですが、評議員の活動にも支えられて協会の活動が続いているという状況です。
国連側のWFPのローマ本部のトップの事務局長は、黒人の女性で、アーサリン・カズンというアメリカの方です。彼女は今年の4 月の着任後、世界三大ドナー国の1 つである日本にも訪問されました。5 月下旬に協会が行っているイベント『ウォーク・ザ・ワールド』にも参加下さいました。また、講演会を国連大学で行い、こちらには皇太子ご夫妻にもご出席いただきました。
続いて国連WFPの活動内容について、詳しくお話をしていきたいと思います。大きく5つの食料支援の活動の側面を持っております。
まず第1 は「命を守る」という側面です。これは、緊急支援とも言われており、干ばつ・洪水・自然災害、更には紛争などによる深刻な食糧不足が発生した場合、まず人の命を守るという為に食料を配給します。
余り知られてないかも知れませんが、WFPは実は国連随一の輸送集団です。飛行機、船、トラックなど、全て自前でオペレーションしていますので、確実に届けられる、そういう強みを持っております。災害や震災などが起こってから48 時間以内に食料が届けられるような体制で運営を行っています。
2 つ目の活動は「発育を助ける」。特に乳幼児や妊婦さん、授乳中の女性に対しての栄養強化を支援しています。特に胎児の頃から2 歳になる位までの最初の1,000 日間が、心身の発達において大変重要な時期だというデータがありますので、この対象となる年齢、そしてお母さん達に対しての栄養強化というのを行っております。昨年は1,100 万人に栄養強化の食品を配給致しました。
3 つ目が「教育の機会を広げる・学校給食プログラム」です。豊橋北RCの皆様も、フィリピンの学校給食の支援をされて来たということですが、WFPも学校給食プログラムを大切な活動の1 つとしています。例えばケニアの難民キャンプの中の学校給食では、赤いカップの中にトウモロコシや小麦の粉に栄養素を加えたものを煮て作った「おかゆ」を配給しています。1 食30 円で子供に学校給食が提供出来ます。昨年は、60 ヶ国以上で約2千万人以上に学校給食を支援しました。
途上国では、女の子が家内作業に従事していて、学校に行かせてもらえなといった状況が多くあります。それを打破する為にも、地域によっては、女の子にだけ、少しだけ多めのお持ち帰りの食料を出しています。そうしますと親も女の子を積極的に学校に行かせるようになります。そういった工夫により、女子の出席率が少しでも改善されるようにしています。また男女を問わず皆勤賞で学校に来ると、お持ち帰りの食料を貰える、というような制度もあります。
4 つ目は「職業訓練」です。食料を配ることは大事ですが、長期的視野に立ちますと、臨時的な食料の配給だけでなく、やはり自分たちで生活が出来るようにしていくというところまで考えていく必要があります。こういった職業訓練を通じて、その見返りとしての食糧支援などを渡しているケースもあります。
5 つ目は、個人では無く地域社会への食糧支援です。例えばエチオピアでは、環境保全のプログラムとして、井戸を掘る、道路の保全、灌漑施設を作るなどの地域に役に立つ施設を作ってもらい、その労働の代価としての食料支援をしています。このような地域社会の自立を目指した食料支援も行っております。
先程も少し触れましたが、WFPは確かに届ける事が出来るのが強みです。独自の輸送手段として、飛行機60 機・船40 艘、トラック4,000 台が世界中で稼動しています。災害時も紛争時も、奥地までこれで分け入って食料を必要としている人に届けています。48 時間以内にですね、緊急支援を届けることを使命に活動しております。フィールドでは、単独では無く国連難民高等弁務官事務所の方やユニセフやワールドビジョンなど他の組織と連携をしていますが、輸送活動に関してはWFPがリードを取らせて頂いています。
「ナイロビの蜂」という映画の中に、WFPがケニアの上空から食料を投下している場面というのが出て来ますが、これをエアドロップと言います。エアドロップというのは、めったには行わない方法ですが、道が分断されていたり、危険な状態にあるなどの理由で、飛行機でしかたどり着けないような場合には、このような方法をとっています。車でも行けない、空からも落とせないような場合は、象やラクダなどの動物の背中に乗せて運搬をするという場合もあります。
通常、国連WFPは途上国を対象に支援活動を実施しているのですが、東日本大震災の際、WFPは日本政府から要請を受け、正式に国連として一部の輸送活動を任せていただきました。
また、物流拠点というのを作る必要がありましたので、拠点として使用する為に、WFPが所持する縦30 メートル、高さ5 メートル横10 メートルもの大きなテントを設置しました。このテントは大きなトラックがドライブスルー出来ます。これは自衛隊の方にも、石巻で5 つ程提供し、大変重宝していただいたそうです。今でも南三陸辺りで漁師さん達が、漁で使う道具などを貯蔵するのに利用しているとのことです。
昨年の震災時、国連WFP協会も、数か月ではありましたが緊急支援募金ということで対応させていただきました。またNPOとして、独自の活動でしたが、食品メーカーさん達のご協力により、無償で食料品をご提供していただき、被災地に届けるという支援もさせていただきました。
WFPの国連世界食料計画では、現在60 名以上の日本人の国連職員が働いており、その内の15 人が来日し各地で様々な支援をしてくれました。NGOに出向してキャパシティービルディング、これは色々なノウハウを伝授するという活動ですが、震災への対応として、そのようなことも影ながらさせていただきました。
続いて、アフリカに目を向けていきたいと思います。飢餓の実態について、昨年起こった「アフリカの角(つの)」という地域での食料危機について説明します。アフリカの角とは、アフリカ大陸の地図で、ちょうど角のように見えるアフリカ東部の地域を指し、一番尖った部分がソマリアです。
昨年の夏、ソマリアから干ばつ、そして飢饉が発生しました。国連の定義ですと「飢饉」という言葉は、1 万人のうち食料不足または栄養不足で毎日2 人が命を落とす、そのような重大な状況になって初めて使われます。東京都の人口に換算しますと、毎日2 千人以上が亡くなるという凄まじい状況です。このような状況が、食料不足からアフリカの角で起こっていました。WFPは緊急体制を整え1,500 万人の犠牲を未然に防ぐ為に緊急募金、緊急支援を昨年の夏から展開し、およそ1,100 万人の命を支える食料を提供することが出来ました。大震災の直後ではありましたが、日本の皆様の温かい思いによって1 億円以上の緊急支援の資金が集まりました。
西アフリカの「サヘル」と呼ばれる地域でも、干ばつによる食料危機が拡大してしまいました。今年になって更に悪化しており緊急支援が継続されております。1,500 万人以上が飢餓状態にあり、資金もまだ足りていないという状況です。ニジェール、チャド、マリ、セネガル、モーリタニア、ブルキナファソなどの国が含まれる地域になります。WFPでは960 万人の被災者に支援を届けることを目指して現在も活動しています。特に女性や子どもといった、弱い立場にある人達にが食料を手に入れられるように専門職員などを派遣して対応に当たっております。
アフリカ以外の地域でもWFPは活動しております。先程10億人が飢餓状態にあると言いましたが、その約6 割がアジア・太平洋地域に在住しています。インドや中国などの人口が多い国が含まれているということもありますが、アジア・太平洋地域もまだまだ非常にニーズの高い地域です。
国連WFPが日本でどのような活動をしているか、私どもの協会の活動について説明します。昨年11 月から、「レッドカップキャンペーン」をスタートしました。これは学校給食が入っている赤いカップを象徴しており、一人でも多くの飢えに苦しむ子どもに学校給食を届けたい、そのような願いを込めたキャンペーンです。
例えば、商品に赤いカップの顔の付いたマークをつけていただいたり、キャンペーンサイトやフェイスブックなどを通じて支援拡大を行っています。そしてコーズリレーテッドマーケティングというソーシャルマーケティングの1 つの手法を使い、買うことで支援に繋がる、寄付に連動する商品の販売を企業にお願いしています。
また、赤いカップのマークは使ってませんが、明光義塾では中学生向け教材の売り上げの一部を寄付していただいています。
また、ユニリーバのリプトンティーの紙パックにWFPの国連のエンブレムのロゴマークをつけて売っていただき、売り上げの一部を寄付いただくことになっています。ユニリーバは、WFPの本部に認定されたグローバルパートナーの一つでもあります。
これ以外にもたくさんの企業に本業を通じた社会貢献活動で対応して頂いております。更に様々なチャリティーポイントやカタログギフト、各種カードのポイントなどでの寄付の対象に国連WFPを入れていただいたりしております。社員の方にも参加していただく給料天引きのプログラムもあります。これは賛同いただいた社員の方から定期的に寄付を集めていただくというものです。株主参加型というものもあり、株主優待の選択の中に、WFPに寄付を入れていただいている企業も増えてきました。
それ以外の参加の方法として、「ウォーク・ザ・ワールド」というイベントがあります。横浜市が国際都市を目指してWFPを1996 年に誘致して以来、協会は横浜に居を構えていまして、今年はそこで「ウォーク・ザ・ワールド」というチャリティーウォークを開催しました。子供の飢餓を無くすという為のチャリティーウォークで参加費の一部が寄付されます。今年は約3,000 名の方の参加があり、参加費1,500 円のうち1,000 円を寄付に当てさせていただきました。大阪でも独自に同じようなウォークが行われました。豊橋でも有志の方がいらっしゃいましたら,来年の5月頃に,豊橋でのチャリティーウォークを企画
していただけると大変ありがたく思います。
そして、これは募集を終了したばかりですが、「エッセイコンテスト」も開催しておりました。これは一作品につき学校給食1日分の30 円が特別協賛企業から寄付され、例え入選に漏れたとしても、書くだけで寄付に繋がるというものです。今回は6,000名を越える参加がありました。豪華な審査員のメンバーで、発表会・表彰式なども予定しております。今年の表彰式には竹下景子さんにご登場いただくことになっています。コンテストは今年で9 年目になり来年以降も開催の予定です。今年は「食べる大切さ」というテーマでエッセイを募集しました。日本に住んでいると、食べられること、飢餓に苦しむこと、そのようなことを考える機会が余り無いと思いますが、これを機会にそういうことにも思いを馳せて頂きたいという願いが込められています。
コマーシャルを見た方もおいでかと思いますが、今年の7 月から来年6 月まで、ACジャパンの支援キャンペーンが行われています。広告ではWFPオフィシャルサポーターの知花くららさんが起用されています。コマーシャルは実際に彼女がタンザニアの小学校を訪れて撮影されました。このコマーシャルを見て寄付をしてくださった方もいらっしゃいます。これを機会にWFPを知っていただければと願っております。
飢餓と貧困を世界から無くす為に、日本の民間支援の輪を広げるにはどうしたら良いか、国連WFP協会では日々チャレンジが続いています。ACのコマーシャルに取り上げていただいたのも大きなことですし、豊橋北RCのように、皆様の善意が更に広がって行くとことも、大きな輪になる1 つのきっかけになると思います。
皆様のお手元に知花さんが表紙の小さなパンフレットを配布させていただきました。詳細はそちらにも書いてありますので、一度目を通していただきたいと思います。世界最大の解決可能な問題の1 つが飢餓問題であると言われています。皆様と力を合わせて解決に向けて前進して行きたいと思っておりますので。是非、ご協力頂ければと思います。
本日は、貴重なお時間をいただきまして本当にありがとうございました。より一層のご支援をお願いいたします。ありがとうございました。
寄付金目録贈呈