【講演】障がい者の自立を支える介助犬(名古屋瑞穂ロータリークラブ)
社会福祉法人 日本介助犬協会 事務局長・医学博士 高柳友子様
介助犬とは、手や足に障がいのある方々の日常生活動作を助けるために、落としたものを拾って渡す、手が届かないものを持ってくる、引き出しや冷蔵庫を開けて中からものを持ってくる、緊急時の連絡手段として携帯電話などを手元に運ぶといった動作を行うよう訓練された犬のことをいいます。
介助犬は、2002年に制定された身体障害者補助犬法(補助犬法)で法的位置付けが明確になり、補助犬法では、同法により認定された介助犬を使用者である障がい者が同伴する事を拒んではならないと定められました。未だこの法律の認知度が低いため、介助犬使用者が飲食店や店舗、医療機関などで「犬は置い貴て」と店舗の利用を断られてしまうことが多々あるのが実情です。
補助犬法では、介助犬より40年歴史の古い盲導犬、そして介助犬よりさらに少ない聴導犬の3種の犬を総称して身体障害者補助犬、略して補助犬としており、これら補助犬が認定を受けると、使用者は補助犬法に則り「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の区別が書かれた表示をつけ、また認定証と健康管理手帳を携帯することが義務付けられます。認知度の高い盲導犬ですら同伴拒否に遭うことがありますが、補助犬を断ることは、使用者自身を断ることと同じだということをご理解頂きたいと思います。
介助犬は、前述したような動作のほか、歩行介助や起き上がり・立ち上がりの介助、衣服や靴・靴下の着脱、スイッチ操作を行うなど、多様な障がい者のニーズに合わせてリハビリテーションの一環といて介助内容が決められます。身体障害の背景として進行性の疾患や重度な合併症、体調の変動が大きいなど多彩な医療的配慮が必要なのが介助犬の大きな特徴で、介助犬トレーナーあリハビリ医療関係者との密接な連携が必要です。自立のためには様々な手段がありますが、介助犬は機能的介助に留まらず、障がい者の生きがいとなり様々なチャレンジへの動機付けとなります。また周囲の人々と犬を介して会話が広がることが大きなリハビリ効果を発揮し、元気と勇気を与えられます。
現在介助犬は全国に62頭(平成25年2月1日時点)、対象となる障がい者は175万人、中でも1万人以上の潜在需用者がいるといわれています。普及への課題は、認知度が低いこと、また財源が寄付に頼られている事が主ですが、その為に訓練士の資格制度がなく、また遺伝性疾患のない補助犬の確保が難しい等の課題もあります。
これまで最も長く、零細ながらも最多の実績を残してきた当会は、2009年新たなる介助犬普及への挑戦として、全国で初めての介助犬専門訓練施設「介助犬総合訓練センター」を愛知県長久手市に建設しました。訓練センターは、補助犬法制定のきっかけとなった故介助犬シンシアにちなんで「シンシアの丘」と名付けられました。
介助犬の普及を支えてくださる企業や個人のみなさまに会員等の形でご協力頂くお願いをしております。一人でも多くの方々に介助犬の存在を知って頂き、また一人でも多くの障がい者が介助犬によって自立し、楽しく社会参加出来る様にご支援頂ければと願います。