ロータリークラブ(国際ロータリー第2760地区 ROTARY International District 2760)

月信WEB

2018年4月号

「母子の健康月間」に寄せて

『母子の健康』はRI重点分野における総合評価指標20180403.jpg



特定医療法人衆済会増子記念病院 理事長・院長
両角國男(名古屋名駅RC)

 UNICEFの世界子供白書は、『母子の健康』の指標である新生児・5歳未満乳幼児死亡率、妊産婦死亡率などで世界の厳しい現実を示しています。2015年の5歳未満乳幼児死亡率と新生児死亡率(1000人当たり死亡数)は、日本の6と3に対し、世界平均では43と32、最も不良な西・中部アフリカは99と32で、日本の10倍以上です。1990年との比較では世界平均も西・中部アフリカも死亡率は50%以下まで改善してきていますが、まだまだ改善が望まれます。新生児や乳幼児の死亡原因は、肺炎、下痢性感染症、HIVなどの各種感染症、低栄養や衛生教育・医療環境の整備遅れ、地域紛争など多岐にわたりますが、死亡原因の多くはワクチンや抗生剤投与、きれいな飲料水確保や衛生環境改善、適正な健康教育などの対策にて短期間で劇的改善の期待できる対費用効果の非常に高い課題です。妊産婦死亡率(1例の妊産婦死亡あたりの妊娠件数)は、日本の13400に対し、世界平均では180、中・西部アフリカでは27と日本の500倍に相当し、この地域での妊娠出産はまさに命がけといえます。避妊教育、出産前後までの衛生環境と適正な医療体制整備により、安全な妊娠出産ができる支援が必要なことは自明です。
 一方、日本の『母子の健康』についても、「子どもと母親」の不幸な出来事がメディアに繰り返し報道される事実があります。不幸な出来事に至る前に恵まれない環境にある母子を確認し適正な社会支援をすることが必要ですが、個々の事例の背景を把握する手段もなく、具体的対策を講ずることはきわめて困難です。
『母子の健康』はRIの6重要分野の1つですが、疾病との闘い、水と衛生、教育の支援、地域経済の成長、平和の推進の5分野で積極的な活動が成果として結実すると乳幼児・新生児死亡率の改善、妊産婦死亡率などの改善につながる総合評価の指標ともいえます。日本で現実に起きている問題や、改善が望まれる国や地域の実情を知り、各ロータリークラブや個人として『母子の健康』の何を対象にどのように活動するかを考えていただく参考となれば幸甚です。