国際ロータリー会長 プロフィール・RIテーマ
RI Chairman Profile/RI Theme
2019-20年度会長
2019-20年度 国際ロータリーのテーマ
経歴
税法、遺産、農業法を専門とする Blackburn, Maloney, and Schuppert法律事務所の社長であるマロー ニー氏は、米国南東部・中西部の大手農場経営者の顧問弁護士であるほか、米国弁護士協会の農業関 係委員会の委員長を務めています。また、米国弁護士協会とアラバマ州弁護士協会、アラバマ州法律 協会の会員です。
地元ジケーターでも熱心に活動し、自身が所属する教会の財務委員長と地元カトリック学校理事長 のほか、Community Foundation of Greater Decatur会長、Morgan County Meals on Wheels会長、 United Way of Morgan County理事、Decatur-Morgan County商工会議所の所長を務めています。
1980年にロータリークラブ入会し、以来、RI理事、財団管理委員と副管理委員長、ジョナサン・マ ジィアベ2003-04年度会長のエイドを務めました。
また、規定審議会の議長と副議長、運営議事手続 きの専門家、研修者のほか、2004年大阪国際大会委員会のアドバイザー、2014年シドニー国際大会の 委員長も務めました。
ガバナーとなる前には、研究グループ交換のリーダーとしてナイジェリアに赴いた経験もあります。
ロータリー財団関連では、未来の夢委員長、ロータリー財団地域コーディネーター、財団研修セミ ナーのモデレーター、恒久基金米国アドバイザー、平和センター委員、WASH(学校での水・衛 生)委員会のアドバイザーを歴任しました。 同じ法律事務所の弁護士であり、ジケーター・ロータリークラブの元会長でもあるガイ夫人ととも に、ポール・ハリス・フェロー、メジャードナー、遺贈友の会会員となっています。
ロータリーは世界をつなぐ
ロータリーの礎は「つながり」です。若い弁護士としてシカゴにやって来たポール・ハリスがロータ リーを創設した最大の理由、それは見知らぬ街でほかの人たちと「つながる」ことでした。それから 1世紀以上が経った今、私たちの周りには、ポール・ハリスの時代には想像もできなかったような友 情とネットワークを築くための方法が数多く存在します。それでも、ロータリーにおける「つなが り」は独特であり、ほかに類を見ません。
国際ロータリーには、地域社会とつながり、職業のネットワークを広げ、強くて末永い関係構築がで きる確固とした使命と構造があります。会員による数多くのプロジェクトやプログラム、ポリオ撲滅 活動におけるロータリーのリーダーシップ、国連との協力などを通じ、私たちはグローバルコミュニ ティとつながっています。私たちの奉仕活動は、同じ価値観を共有し、より良い世界のために行動し たいと願う人びとの結びつきをもたらします。また、ロータリーがなければ出会うことがなかった人 びと、 共通の考えを持った人びと、私たちの支援を必要とする人びととつながり、世界中の地域社 会で人生を変えるような活動を行うことを可能にしています。
21世紀の新たな10年の始まりに、私たちはロータリーの未来を形作っています。2019-20年度、ロー タリーは新しい戦略計画を実行に移し、規定審議会が採択した革新性に応え、より活性化された重点 分野において活動します。しかし、ロータリーの未来を形作る本当の場所はクラブです。刻々と変化 する現実に対応するために、ロータリーはクラブに注力していかなければなりません。
クラブはロータリーでの経験の中心部ですが、今ではクラブのあり方をより創造的かつ柔軟性をもっ て決めることができます。これには例会の方法や、何をもって例会とするかを検討することも含まれ ます。会員増強のアプローチにおいては、組織立った戦略的・革新的な方策が必要です。そうするこ とで、地域社会とのより広く、深いつながりができるだけでなく、より多様な会員に魅力を感じても らい、積極的な参加を促すことができるでしょう。
実際のところ、ロータリーは家族です。そうであるにも関わらず、会員組織の構造やリーダーシップ の要求などがあることで、今日の若い職業人にとってはロータリーが手の届きにくい存在となってい るようです。ロータリーは、家族との時間を犠牲にするのではなく、家族との時間を補うような経験 を提供する場である必要があります。クラブが温かく、みんなを受け入れるような雰囲気があれば、 家族と奉仕活動は両立でき、家族志向の若い職業人にロータリー奉仕や市民としての参加の機会を提 供できます。また、ロータリーの役職に対する期待事項を、多忙な職業人にあわせて現実的かつ管理 可能なものとすることで、将来ロータリーのリーダーとなる次世代のロータリアンのスキルを高め、 ネットワークを築くことができるでしょう。
2019-20年度には、「ロータリーは世界をつなぐ」のテーマの下、ロータリーの奉仕を通じて、有能 で思慮深く、寛大な人びとが手を取り合い、行動を起こすためのつながりを築いてまいりましょう。
2019年国際協議会RI 会長エレクトによるテーマ講演
皆さん、おはようございます。サンディエゴへ、そして2019年ロータリー国際協議会へ、ようこ そお越しくださいました。
サンディエゴへの旅は快適でしたか?
旅行、特に空の旅について文句を言う方は少なくありませんが、私はいつも旅行が好きです。列
車でも、飛行機でも、車でも、船でも、どこかに行くのが好きなのです。ワクワク感や新しい機
会、それまで見たことのないものを見たり、会ったことのない人に会ったりするチャンスがある
からです。
スーツケースの荷造りをして家を出たら、何が待ち受けているかわかりません。
これはいいことかもしれませんし、よくないことかもしれません。
数カ月前、妻ゲイと旅行をしたとき、陽気な旅好き(つまり私)の楽観主義を打ち砕いてしまう
ような経験をしました。もう旅を終えているはずの日なのに、予定していなかった空港で降ろさ
れ、翌朝は聞いたことのない名のホテルで目覚めるはめになったのです。まったくついていない
日でした。
しかし、旅とは自分でつくるものです。私たちは、ニューヨーク市のジョン F. ケネディ国際空 港で6時間ほど待たされていました。この空港には年間約6千万人の利用客がおり、90社以上の飛 行機が乗り入れて世界のほぼすべての国を行き来しています。アメリカの玄関口ともいえる空港 ですから、ありとあらゆるタイプの人がいます。待ちながら、私はゲイに「ぶらっと散歩して、 人間観察をしてみよう」と言いました。そして、ターミナルの一番端まで歩き、戻ってくる間に、 それぞれの搭乗ゲートを観察しました。いろんな目的地に向けて、いろんなグループの人たちが 搭乗を待っています。
目的地の表示を見なくても、どこ行きの飛行機だかわかることもありました。台北、モスクワ、 ケープタウン、イスタンブールなど、そこにいる人たちの行き先がわかるのです。各ゲートが、 人の島をつくっていました。コンコースの中央はニューヨーク、そこを歩く私たちは、ほかの人 たちと一緒に川を下っています。川の流れを離れて搭乗ゲートの座席に座ると、そこは島です。 その島は、ブエノスアイレスだったり、パリやテルアビブだったりします。
歩き始めたとき、ある考えがひらめきました。「いろんな国から、いろんな人が、一つの場所に
集まっている。ロータリーみたいだ!」と。しかし、ゲートを次々と通り過ぎながら、あること
に気づきました。
いや、ロータリーとはまったく違う。この川を下っている人はみな、それぞれ違う島を目指して
いるから。それぞれの島は、一つの島でしかない。台北に行く人たちが互いに話すことはあって
も、カイロ行きやリマ行きの人たちと話すことはない。アムステルダムに行く人たちは、ラゴス
に行く人たちとはまったく関係がない。
これをロータリーと比べてみてください。
これから数日間、皆さんは、世界中から集まった人たちと出会い、話すだけではなく、ともに協 力し、分かち合い、人生最大の冒険に向けて準備をしながら、仲間や友人となっていくのです。
荷造りをして家を出たとき、この旅で何が待ち受けているかは誰もわかりませんでした。 今もわかりません。 しかし、確かなことが一つあります。それは、旅とはすべて自分でつくるものだということです。
今週、私たち一人ひとりが始める旅、2019-2020年度に向けて、また2019-2020年度とその先にと もに歩んでいく旅は、私たちが一緒につくるものです。出身国がどこであれ、話す言語が何であ れ、文化や伝統が何であれ、私たちがここに来た目的は一つです。
それは、より多くのロータリアン、ローターアクター、そしてすべてのロータリーファミリーが、 これまでよりもっとよく奉仕できるように、より強いロータリーを築くことです。
2019-2020ロータリー年度に目を向けながら、今日はここで、そのための私たちの役割についてお 話ししたいと思います。
ロータリーだけでなく、どの組織でも、リーダーの目標は、決して「可能な限り最大限を達成す ること」であるべきではありません。真のリーダーの目標は常に、「周りの人が可能な限り最大 限を達成できるようにすること」であるべきです。皆さんが素晴らしい仕事をすると信じて疑い ませんが、今週とその先に注目していただきたいのは、地区とクラブが最大限に活動できるよう 導くには何が必要か、ということです。皆さんの役割は、クラブで活動するロータリー会員を支 援すること、そして、より強い組織を築くことです。これは、次年度の皆さんの役割であり、私 の役割であり、私たちが分かち合っている役割です。そのために私たちは、新しい戦略計画に 沿って協力します。すなわち、より大きなインパクトをもたらし、参加者の基盤を広げ、参加者 の積極的なかかわりを促し、適応力を高めるのです。
活動の指針となる強調事項は4つあります。
最初の強調事項は、ロータリーを成長させることです。私たちの奉仕活動やプロジェクトのイン
パクトを成長させること、また、最も重要なのは、これからより多くのことを達成するために、
会員基盤を成長させることです。
ロータリーの会員増強がよく話題になります。毎年、同じ問題について、少しずつ違う方法で話 しています。ロータリーが急成長している地域もありますが、多くの地域では期待する変化が見 られていません。昨年、ロータリーでは、誰も望んでいなかった記録が打ち立てられました。そ れは、ロータリー退会者数の記録です。期待した経験がロータリーで得られなかったから退会し た、という人たちがいました。生涯ずっとロータリーを愛しているという人たちもいましたが、 彼らは去りました。その能力、経験、リーダーシップと一緒にロータリーを去ったのです。
この課題への答えは、退会者の代わりに新入会者を増やすことではありません。それは、穴だら
けのバケツに水を注ぐようなものです。会員減の根本原因、すなわち、会員の不十分な参加や、
着実に進む会員の高齢化に取り組む必要があるのです。
根本から変える時が来ていることは明らかです。会員の参加促進と多様化を阻む障害が何である かは、もうわかっています。この知識を基に、行動を起こす時が来ています。新しい会員モデル をつくり、ロータリー入会への新しい道をひらき、既存のクラブが既存のニーズをかなえていな いところで新しいロータリークラブとローターアクトクラブをつくるのです。これは、クラブと 会員基盤の成長がなぜそれほど大切なのかをクラブ会長に理解してもらうだけでなく、そのため の効果的な構造をクラブが備えられるようにすることを意味します。
奉仕するロータリーと消えゆくロータリー、それを分かつのが会員増強であることを考えると、 会員増強委員会のないクラブがいかに多いか、また、友人の勧誘を会員に強く勧めるだけのアプ ローチを用いているクラブがいかに多いかに驚きます。それは、すべてのクラブが一様にならざ るを得ない道であったばかりか、成長のない20年間をもたらしました。必要なのは、組織的なア プローチです。全地区に会員増強委員長を任命すること、そして、個人ではなく地域社会に入念 な目を向けることのできる多様な委員から成る会員増強委員会をクラブに設置することです。地 域社会にいる人びとのグループ、役職、職業のうち、クラブに会員がいないのはどれか?見つけ る必要があるのは、そういった人たちです。
このアプローチは画期的でも何でもなく、ロータリーに古くからあるアイデアの一つにすぎませ ん。つまり、「職業分類制度」と呼ばれるものです。113年間続いてきたものであり、これを再 発見し、活用する必要があります。
これに加え、新クラブの結成を通じてロータリーを成長させなければなりません。ロータリーク
ラブがないところだけでなく、ロータリーが既に活発に活動している地域社会においても、新ク
ラブをつくる必要があります。ほかのクラブとは違う例会や奉仕の機会がある新しいモデルのク
ラブを立ち上げる必要があります。新クラブの結成は、地区ガバナーと地区の明確な責務である
ことを忘れないでください。
次年度の2つめの強調事項は、クラブよりも家庭に近いところにあります。それは、「家族」です。
私がガバナーだったとき、まだ幼い娘が2人いるのにどうやって職業とロータリーのバランスを 図っているのかと時々聞かれました。その答えはシンプルでした。ゲイと一緒に子どもたちも連 れていったのです。娘たちはマローニー家で育てられましたが、ロータリーファミリーにも育て られました。これは、娘たちだけでなく、家族全員のためになりました。さらに、クラブか家族 かの取捨選択をしなくて済んだので、ロータリーのためにもなりました。
会員にこの選択を期待すべきではありません。ロータリーの活動と家族との時間が競合せず、互
いに補完し合うような文化をつくっていく必要があります。これには、現在の文化を変えるため
の現実的なステップを踏み出すこと、つまり、期待を現実的に受け止めて、会員のスケジュール
に配慮し、すべてのレベルのロータリー行事(この国際協議会にいたるまで)に子どもを受け入
れることを意味します。
私たちが最もロータリーに必要とする人びと、すなわち、地域社会に貢献したいという若い職業 人たちの日常的な現実を無視したままでは、ロータリー会員の平均年齢を変えることはできませ ん。人生の段階の途上にある若い世代を、ありのままに迎え入れる必要があります。
これと関連しているのが、3つめの強調事項です。それは、忙しく仕事しているロータリアンも ロータリーのリーダーとなれるようにするための道をひらくことです。
クラブ会長の仕事は、忙しい職業人には重すぎる時間のコミットメントであると見なされるべき ではありません。地区ガバナーの仕事は引退してから務めるものだと期待すべきではありませ ん。リーダーの役職をフルタイムの仕事にしてしまうことで、ロータリーが最も必要とする人た ち、つまり、奉仕とリーダーシップを数十年にわたってロータリーで発揮できる潜在性のある人 たちに、貢献への扉を閉ざしてしまっているのです。
ロータリーのはしごは、登るのが難しいものであるべきではありませんし、その必要もありませ
ん。
もっと簡単にできるのです。ロータリーでリーダーとなることを阻む障壁の多くは、私たち自身 が築いたものであり、違う時代、違う世代に合わせてつくられたものです。今こそ、適応し、文 化を変えるときが来ています。全クラブを個別に訪問しなくても優れた地区ガバナーになれる、 また、全部一人でこなさなくても優れたクラブ会長になれるというメッセージを伝えるときが来 ていいます。人生のどの段階にあっても、次年度にリーダーシップを執るのは皆さんです。ご自 分の地区で、リーダーシップの文化を変え始めてください。
これら3つの強調事項はすべて、組織内部の健全さ、すなわち、ロータリーの成長を可能とする 構造と機能に焦点を当てています。しかし、ロータリーは地域社会から孤立している存在ではあ りません。ロータリーは、それが奉仕する世界に存在するのであり、世界をつなぐために奉仕し ています。
この理由から、4つめの強調事項は、長年にわたるロータリーと国連との歴史的な関係に焦点を 置いています。
2020年はロータリーの115周年にあたり、国連はその歴史的な設立から75周年を迎えます。この 年は、私たちのパートナーシップを祝うときでもあり、世界各地で一連の会長主催会議が予定さ れているほか、ロータリーが大きく貢献できる「持続可能な開発目標」に焦点を当てていきます。安全な水、保健の充実、教育の改善、経済の安定など、世界の恵まれない人たちのためにど の分野で活動する場合も、ロータリーは、より健康で、平和で、持続可能な世界に向けた国連の 継続したコミットメントを共有しています。ロータリーは、ほかの組織では得られないものを提 供しています。それはつまり、奉仕と平和という精神の下に世界中の人びとがつながることがで き、目標に向かって意義ある行動を起こすことのできるロータリーのインフラです。
ロータリーのビジョン声明は次のように謳っています。「私たちロータリアンは、世界で、地域
社会で、そして自分自身の中で、持続可能な良い変化を生むために、人びとが手を取り合って行
動する世界を目指しています」
私たちは行動人です。世界を変えたいと望むだけでなく、インスピレーションを持続可能な真の
変化に変える力が、私たちにはあります。
その力は、私たち自身、また、私たちの活動を可能とするロータリーという土台があるおかげで
す。
ロータリーを通じて、私たちはつながります。
ロータリーで私たちは、お互いの違いを超え、深く、意義あるかたちでお互いにつながることが
できます。ロータリーがなければ出会うことがなかった人びと、職業上の機会、私たちの支援を
必要とする人たちとのつながりをもたらしてくれます。
このつながりこそが、私がJFK空港のコンコースを歩いたときの経験と、ロータリーでの経験を、 まったく違うものにしています。ロータリーでは、誰一人として島ではありません。誰であろう と、どこに住んでいようと、どの言語を話そうと、どの伝統に従おうと、私たちは皆一緒にいま す。私たちは互いに、また地域社会とつながり、同じクラブの会員だけでなく、私たち全員が属 する世界的コミュニティの人たちとつながっています。
ロータリーでの体験の中核にあるのが、このつながりです。それがあるから、私たちはロータ リーに入会し、ロータリーにとどまるのです。ロータリーを成長させる方法も、つながりにあり ます。そして、これが2019-2020年度のテーマです。「ロータリーは世界をつなぐ」
世界がかつてないほど分断されている今日、私たち全員をつなぐのはロータリーです。私が手に しているこの機器も、世界とのつながりを可能にします。皆さんも2019-2020年度テーマを撮影し ようと携帯電話を手にお持ちのようですので、ソーシャルメディアでこのテーマをシェアしてい ただきますようお願いします。写真を撮って、ソーシャルメディアに投稿し、ロータリーを通じ て皆さんが世界といかにつながっているかをシェアしてください。
比類のない基盤を有するロータリーを通じて私たちは、人類の素晴らしい多様性とつながり、共 通の目的を追求しながら末永く深い絆をつくり出します。
楽観主義、勇気、そして喜びを胸にともに旅立つ今、この旅は、ほかの旅と同じように、私たち 自身がつくっていくものだと私たちは知っています。これまで何世代ものロータリアンにインス ピレーションを与えてきた奉仕と友情の精神で、これからの1週間、そして次年度に取り組みま しょう。奉仕、友情、そしてコミットメントを通じて「ロータリーは世界をつなぐ」という確信を胸に。