「ロータリアンの皆さん、あなた方が私にしてくださったことが、どんなことかお分かりですか。あなた方は、私と子供たちに新しい人生を与えてくださったのです。
本当に、本当に、本当にありがとうございました」彼女は人目もはばからず、すすり泣き出しました。恥ずかしながら、話を聞いていた私たちも、もらい泣きしてしまいました。しかし、その場に居合わせた誰もが、あの涙を通じて、ロータリアンとなったことの真の意味を、深く理解することができたのです。12年前のあの日以来、私は、同じ人間である人々に希望と尊厳と自信をもたらすには、住む家を提供するのが一番の方法だと信じるようになりました。家族は家から始まります。あらゆる家族の中心を成しているのが母と子です。そして私たちの住む地域社会とは、単なる個人の集まりではなく、家族によって築かれています。一つ屋根の下に暮らし、互いを支え、助け合い、共に運命を分かち合っているのが、家族というものです。良き家族が、良き隣人となり、良き地域社会をつくり、ひいてはそれ
が偉大な国を築くことになるのです。
来る年度、第一の強調事項を「家族」としたのは、私たちの目標のすべてが家族を中心に据えているからです。そうしてはじめて、安全な家、水と衛生、疾病予防、そして母子にかかわるすべての問題について考え始めるようになるのです。家族が強くあるためには、まず、しっかりとした安全な家がなくてはなりません。その家があってはじめて、健康や希望がもたらされ、家族の調和が生まれるのです。
もう何年も前のことになりますが、私はカルカッタのマザー・テレサと共に奉仕させていただいく機会に恵まれました。マザー・テレサは、このように言っておられました。「世界がひっくり返り、苦しみにあふれているのは、家庭の中、そして家族の間に、愛が欠如しているからです。子供のための時間も、家族の時間も、共に楽しむ時間もありません。愛は家庭から始まり、家庭に息づくものです。今日、世界にこれほどの苦しみと不幸せがはびこっているのは、その愛が足りないせいなのです。皆が忙しさに追われ、子が親と過ごす時間、親が子と過ごす時間がほとんどありません。世界平和の崩壊は、まず家庭から始まるのです」平和を取り戻すには、家庭と家族から始めなければなりません。
第二の強調事項は、私たちが一番得意とすることを継続していくことです。なぜなら、私たちには得意とすることが数多くあるからです。きれいで安全な水の提供、識字力の向上のほか、新世代という新たな奉仕部門を通じて、明日のリーダーとなる青少年を育成する活動などが、その代表的な例です。もちろん、ポリオ撲滅にも継続して力を注いでいきます。私たちはゴールに限りなく近づいています。デズモンド・ツツ大主教が語るように、ポリオは「あと少し」で撲滅できるのです。これらすべてを行うためには、引き続き長期計画に沿って、こうした活動を発展、充実させ、さらなる高みへと進化させていかなければなりません。そして、ロータリー財団の未来の夢計画を支援していかなければなりません。
発展は繁栄につながり、繁栄は平和につながります。ですから、これからも地域を育む活動を続けていきましょう。インドのクラブのように、ダムや橋を建設するという大きなプロジェクトもよいでしょう。あるいは、学校の教室に机や黒板や扇風機を備えるといった小さなことでもよいでしょう。始めてみれば、本当に大切なのはプロジェクトの規模ではなく、誰かの必要を満たしてあげたいという意志であるとお気づきになるはずです。「難しい」仕事は今すぐにでき、「不可能な」仕事は少々余分に時間がかかるだけだということを、私は経験から学んでまいりました。