本日、私たちは、人生の貴重な1年間をロータリーに捧げる覚悟を決めたのですから、私たち一人ひとりに、果たすべき役割があることをしっかりと理解しておきましょう。それぞれの国に戻り、ただベストを尽くすと言うだけでは不十分です。私たちは、全力投球し、やるべきことは必ず成し遂げると自らに誓う必要があるのです。
これを成し遂げるための決意と力は、皆さま一人ひとりの中から引き出されるものですから、皆さま全員がきっと成功を収められると確信しております。何かを成し遂げようと思うなら、ありとあらゆる知恵を振り絞らなければなりません。それには、まず自分自身の内側から始めるしかないのです。「私はなぜここにいるのか。あなたはなぜここにいるのか」と、自らに問いかけてみるべきです。その答えを申し上げましょう。それは、私たちは誰しも人生の充足を求めており、今私たちが担わんとしている責務が、まさにその充足の一部であるからこそ、私たちはここにいるのです。
この充足を得るには、内なる自分と外なる自分との均衡を図る必要があるでしょう。内なるものが願望や意志や気力であるのに対して、外なるものとは自らが取る行動や創り上げるイメージです。ですから、こころの中を見つめ、内に秘めたる力を解き放ち、その力を駆使して、まわりのすべての人、すべての物を受け入れるよう、皆さまにお願いしたいと存じます。どうぞ、まずご自分自身を見つめ直してください。それから、ご自分が定められた目標に向かって、一歩一歩、自信を持って進んでください。自らを発見し、潜在的な力を引き出し、迷わず、ひるむことなく、「出でて奉仕し」、世界で博愛を広げてください。次年度のテーマは、このことを言い表した「こころの中を見つめよう博愛を広げるために」です。
では、どのように実践すればよいのか。それは、これまでお話ししてまいりました通りです。世界中のすべて
の灯りも、自身の内にある一条の光の尊さには及びません。皆さまのこころに愛と献身の光が輝くよう、理解の光が射すよう、家庭に調和のともし火がともるよう、そして皆さまの手から奉仕の明るい光が絶え間なく輝くよう、私は願っております。
最後にある話をご紹介いたしましょう。私の愛読書に、トルストイの大河歴史小説「戦争と平和」があり、これはロシア遠征が失敗に終わるナポレオン軍を描いたものです。この話の中に、フランス軍がすぐそばまで迫り、絶体絶命の窮地に立たされた2人のロシア人、将校とその友人が会話している場面があります。
将校に向かって友人が、「勝利をもたらすのは武器だ」と言います。将校は、「いや、勝利を決めるのは武器ではない」と反論します。
すると友人は、「だとしたら、一体何なのだ」と尋ねます。
将校は一瞬間を置いてから、このように答えます。「勝利を決めるのは、僕やこの男の中にある気持ち、兵士一
人ひとりの中にある気持ちだ」
なぜ、この話で本日のお話を締めくくろうとしているのかと申し上げますと、一つには、戦争と平和についてロータリーで多く語られてきたことが挙げられます。しかし、それ以上に、私はこの20分間のお話の中で、ロータリアンとは、ロータリーとは、まさに皆さまの中の気持ち、ある人間の中にある気持ち、私の中にある気持ちであることを伝えたかったからです。
「こころの中を見つめよう 博愛を広げるために」このテーマを胸に、この国際協議会が皆さま一人ひとりの
ご期待に添う体験となりますよう、心より願っております。