私は、「超我の奉仕」は単なる標語ではないと考えております。それは、誰の人生をも、さらに豊かで、有意義なものにする、生き方を示していると思います。
ロータリアンは、自分よりも、ほかの人のニーズを重視します。自分のためだけではなく、社会全体のためを考えます。「超我の奉仕」という言葉は、人生で本当に大切なこと、エネルギーを注ぐべきことは何なのかを、私たちに教えてくれる言葉です。そうすることで、より平和な世界の基盤を築くことができると考えます。
そこで私は、2012−13年度のロータリーのテーマを、「奉仕を通じて平和を」といたしました。
それは、「平和」をどのように定義するにしても、私たちは奉仕を通じて、平和をもっと現実に近づけることができるからです。
また、「超我の奉仕」は、人はみな自分だけでは生きていけないということを教えてくれます。人との関わりのない人生は、空しく、つまらないものですが、家族、地域社会、そして人類全体における自分の役割を常に意識して、つまり、人のために生きることで、この世界における自分の役割がはっきりと見えてくるのです。
私の世代は、戦後に日本で育った最初の世代でした。ですから、私たちが、それほど平和を重視するのは、当たり前かもしれません。日本で軍国主義の台頭の結果を経験した私たちの世代は、自分たちの考え方を変え、平和を選ぶ大きな決断をし、その結果、目覚しい経済発展を目にしました。
この決断があってこそ、日本は成長と繁栄を遂げることができたと思います。これによって、次世代の子供たちが安全な暮らしを送り、教育を受け、暮らしを向上させることができたのです。この決断は、日本人の世界に対する見方と、自国に対する見方を根本的に変えました。日本人は心を開き、寛容を学び、もっと深く世界を理解するようになりました。
さらに、平和を選択したことによって、私たちはより前向きな目標に力を注げるようになりました。個人のニーズより、社会のニーズを重視するのは、日本の文化と切り離せない、伝統的な価値観です。2011年3月の大地震と災害後の苦しみを乗り越え、復興に努力できたのも、この価値感があったからです。
これは、日本以外の国々にとっても、良い教訓であると感じております。他者のニーズが、自分自身のニーズよりも大切だと思え、社会全体のための共通の目標に向かって力を合わせることができるようになれば、世界に対する見方、関わり方、価値観など、すべてが変るようになります。